残り少ない時間が人をポジティブにする!
エイジング・パラドックスとは、老年期における身体的な喪失感を超え、精神的な幸福感を感じる現象を指します。2025年4月1日以降、高年齢者雇用安定法第9条第1項に基づき、定年を65歳未満に設定している事業主は、高年齢者が65歳まで安定して雇用されるよう措置を講じる必要があります。しかし、この法律の課題は、定年の延長や廃止そのものではなく、「必要な措置を講じればよい」とされる点にあります。
具体的には、この措置とは希望者全員に対して65歳までの継続雇用制度を導入することです。多くの場合、雇用は維持されますが、給料が大幅に削減される傾向があります(統計上、約3割の減少が多いとされています)。その結果、60歳を迎えた多くの人々が、自己効力感を失い、モチベーションが低下し、会社へのロイヤリティが希薄化するという課題に直面しています。
「人生100年時代」と言われる現代において、キャリアは生涯を通して考える必要があります。しかし、高齢者の就業環境はまだ十分に整備されていません。また、60歳を過ぎると、個々人の健康格差の問題がより顕著になっていく傾向があります。キャリアに関する問題は、組織と個人の課題から、個人の課題へと重点が移りつつあります。
60歳を超えると、身体的な喪失感との闘いが始まります。しかし、その一方で、学習や経験を通じて獲得される「結晶性知能」は60歳以降も成長し続けます。この結晶性知能は精神性を高め、身体的な喪失感を超えた精神的な幸福感をもたらすのではないでしょうか。これこそが、エイジングパラドックスの本質であると私は考えます。
残された時間は少ないかもしれませんが、過ごしてきた時間は長い。だからこそ、人はよりポジティブになれるのです。
