同じ会社に勤めること悪か?
退職金は税制上、優遇されています。日本特有の制度である退職金は、終身雇用とともに高度経済成長を支えた重要な要素の一つでもあります。企業は右肩上がりの事業を支えるため、熟練社員を確保してきました。一方、終身雇用の安定した環境の中で、従業員は現場に精通し、改善(カイゼン)を重ねることで事業の成長に貢献しました。つまり、退職金は長期勤務の報酬であると同時に、給与の後払いという側面も持っています。
このような後払いとして支給される退職金は、老後資金として極めて重要な役割を果たします。しかし、退職時に一時金として受け取る退職金に、給与と同様の超累進課税が適用された場合、税負担が過剰になってしまいます。そのため、退職金には以下のような税制優遇が設けられています。
退職金控除のポイント:
- 勤続年数に応じた退職所得控除
- 1/2課税
- 分離課税
勤続年数に応じた退職所得計算式は以下の通りです:
- 勤続20年以下・・ :退職所得=(退職金 − (勤続年数 × 40万円))×1/2
- 勤続20年を超える :退職所得=(退職金 − 800万円 − (勤続年数 − 20年))×1/2
一方で、政府は骨太方針2023の中で「成長分野への労働移動の円滑化」を掲げ、退職所得課税制度の見直しを検討しています。時代は右肩上がりの成長期から不確実性の高い時代へと移行し、企業は時代の変化に対応するため、人材の入れ替えを進める必要に迫られています。その結果、運用コストのかかる退職金制度が企業にとって負担となりつつあります。これを背景に、雇用流動化を促進する名目で、退職金税制優遇の見直しが議論されています。
しかし、多くの従業員は退職金を前提にキャリアプランやファイナンシャルプランを構築しており、キャリア教育や金融教育を受けてきました。この制度を急に変更することは、社会的に不誠実な行為と言えるのではないでしょうか。もはや、会社を愛し、長く勤め続けることは「悪」とされるのでしょうか。現在、人々には自律的なキャリアプランやファイナンシャルプランが求められています。
