米国の終身雇用制の終焉

米国にもあった大家族主義企業

米国IBMのように、長期的な技術開発と市場支配を目標としていた企業は、従業員のスキル・技術・忠誠心を育成するために終身雇用制度を採用していました。これは決して、一部の学者が述べるように、終身雇用制度は、日本の丁稚制度を起源とする日本固有の雇用制度ではありません。

1950年代から1980年代にかけて、IBMはコンピュータ業界の巨象として君臨しました。同社は「社員を解雇しない」ことを誇りとし、従業員がIBMに精通している強固な社内文化を築き上げていました。米国では基本的に随意雇用制度(At-Will Employment)が主流ですが、IBMのほかにもコダックなど、多くの大企業が終身雇用制度を採用していました。

しかし、1990年代以降、IBMはパソコン市場やUNIXを展開するベンチャー企業との競争に苦しむようになります。1992年に約50億ドルの赤字を計上したIBMは、1993年にルイス・V・ガースナーをCEOに迎え入れました。彼の指導のもと、IBMはコスト削減とビジネスポートフォリオの変革(ハードウェア中心のビジネスからサービスビジネスへの転換)を進めるため、誇りとしていた終身雇用制度を放棄し、随意雇用制度と成果主義を導入しました。

IT革命やグローバル化の進展により、IBM同様に終身雇用制度を採用していた大企業は次々とその制度を放棄しました。こうして、米国の終身雇用制度は終焉を迎えました。

このような状況の中、政府は労働者が流動化する雇用体制に適応できるようにするため、1998年に労働力投資法(Workforce Investment Act, WIA)を成立させました。この法律は、労働者の職業訓練と雇用機会の拡大を目的としています。

米国が歩んできた道をたどるように、日本でもリスキリングが今、注目されています。