何を基軸とするべきか?
トリフィンのジレンマとは、基軸通貨国の自国通貨(基軸通貨)の信用が高まることで自国通貨高が進み、貿易競争力が低下し、貿易赤字が拡大する。その結果、経常収支が赤字となり、最終的に基軸通貨の信用不安が国際的な問題となる状況を指します。
第二次世界大戦後のブレトン・ウッズ体制において米ドルが基軸通貨となって以来、このジレンマは世界経済に影響を与え続けています。特に、ニクソン・ショック(1971年)、プラザ合意(1985年)、トランプ政権下の関税政策(2018年~)などを通じて、米国と世界経済に深刻な課題をもたらしました。
また、2008年の金融危機(リーマン・ショック)では、米国の経済政策の失敗が全世界に波及し、基軸通貨としての米ドルの問題が改めて浮き彫りになりました。この課題に対し、中国人民銀行の周小川総裁(当時)は、国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)を基軸通貨として活用することを提案しました。
SDRは1969年に創設されたIMFの国際準備資産であり、その価値は米ドル、ユーロ、人民元、日本円、英ポンドの5つの主要通貨のバスケットに基づいて決定されるため、一国の通貨への依存を軽減できます。SDRは、新型コロナウイルスの影響を受けた金融対策として、IMFが約4,560億SDR(約6,500億米ドル相当)を加盟国に配分し、世界の流動性を拡大した実績があります。 現在、SDRをベースとした電子マネーを貿易決済や各国の外貨準備として活用する可能性も検討されています。今こそ、基軸通貨制度を改革する重要な機会なのかもしれません。
